奇想天外映画祭2022

予告編

上映作品

リキッド・スカイ
40周年記念4Kデジタル修復版上映

製作・監督|スラヴァー・ツーカーマン
出演|アン・カーライル、ポーラE・シェパード、ボブ・ブラディ
1982|アメリカ|112分|カラー

小さな宇宙船がニューヨークに着陸する。エイリアンたちは麻薬による陶酔を求めて、ヘロインからさらには人間のオーガニズム絶頂期に脳内で分泌される快楽物質を追い求めている。息をのむばかりの美と輝きの、失われたニューヨーク。セクシュアリティの解放、性的暴力に対する復讐、セックスに憑かれた男たちは絶頂に達すると消滅する。奇怪で気取ってそれでいてきらびやかな世界。そして“ジェンダーファック・ファッション”。この世界を生み出したのが、共同脚本執筆者であり、レズとゲイのパンクモデルの二役をこなしたアン・カーライルだ。痛快で“ぶっ飛んだ”『リキッド・スカイ』はカルトの枠を超えた唯一無二の作品として鮮やかに光り輝く。
© Slava Tsukerman

ワンダーウォール

監督|ジョー・マソット 音楽|ジョージ・ハリソン
出演|ジェーン・バーキン、ジャック・マッゴーラン
1968|イギリス|92分|カラー

ロンドン。初老の自然科学者オスカー・コリンズはアパートの隣に越してきたジェーン・バーキンを偶然見つけた壁の穴から覗いているうちに、研究対象を“若いキュート”な彼女に変えてしまい夢と幻想の世界にはまり込んでしまう。イギリス時代最後の主演作となったバーキンはセリフ一切なし(ただ覗かれるだけの不可思議な役どころ)。音楽はサントラ盤が最初のアルバム「不思議な壁」となったザ・ビートルズのジョージ・ハリソンが担当。インド・テイストのサウンドが全編に響き渡る。『レッド・ツエッぺリン/強熱のライブ』のジョー・マソットのサイケデリックなデビュー奇作。

顔のない眼
ジョルジュ・フランジュ生誕110年記念上映

出演|ピエール・ブラッスール、アリダ・ヴァリ
1959|フランス=イギリス合作|90分|モノクロ

ジェネシュ医師の娘クリスティーヌは交通事故で顔に大火傷を負い森の中の屋敷で仮面をつけてひっそりと暮らしていた。ジェネシュはクリステイーヌにもとの顔を取り戻そうと若い女性を殺して彼女たちの顔の皮膚を娘に移植するのだが、何度試みても失敗してしまう…。怪奇と幻想と恐怖に満ちたフランジュのホラー映画史に残る傑作。

赤い夜
ジョルジュ・フランジュ生誕110年記念上映

出演|ゲイル・ハニカット、ジャック・シャンプルー
1974|フランス=イギリス合作|100分|カラー

テンプル騎士団の秘宝を狙って、“赤い仮面”の男が率いる仮面軍団とゾンビ軍団が共闘して挑むのだが…。当初はルイ・フイヤードの「フアントマ」のテレビ・シリーズとして企画されていた。フランジュの『ジュデックス』の流れを組む荒唐無稽なアクション活劇。

狂乱の大地

監督|グラウベル・ローシャ
出演|ジャルデルー・フィーリョ、グラウセ・ローシャ
1967|ブラジル|107分|モノクロ

60年代初頭、突如ブラジルに現れた“狂気”がヨーロッパの映画人たちを震撼させた。架空の軍事独裁国エル・ドラドの革命と反乱を描いたグラウベル・ローシャ3作目の本作は、ひたすらアナーキーな世界に邁進する主人公の情念とパワーが画面にほとばしり見るものを圧倒する“シネマ・ノーヴォ”の傑作。

昇天峠

監督|ルイス・ブニュエル
出演|リリア・プラド、カルメン・ゴンザレス
1951|メキシコ|75分|モノクロ

メキシコ、ゲレーロ州の海沿いの村、サン・へロミート。村はヤシの実で成り立っている。主人公オリヴェリオの結婚式の当日、突然母の容態が悪くなったことから、彼はとある事情で隣町までバスで行く事になる。危険な山道を走るバスに驚くべき珍事が次から次へと降りかかる…。メキシコ時代のブニュエル・ワールド満載の逸品。

殺られる

監督|エドウアール・モリナロ 音楽|アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ 出演|ロベール・オッセン、フイリップ・クレイ、マガリ・ノエル
1959|フランス|90分|モノクロ

50年代末にフランス映画界に登場したモダン・ジャズと犯罪映画の結びつきがあり、『死刑台のエレベーター』とマイルス・デイヴィスや『大運河』とMJQなどに次いで登場したのが『殺られる』である。当時にしては珍しく暴力とエロティシズムを随所に盛ったノワールの佳作であり主演のロベール・オッセンが素晴らしい。

サイド・ストリート

監督|アンソニー・マン
出演|ファリー・グレンジャー、キャシー・オドネル
1950|アメリカ|83分|モノクロ

郵便配達員のジョーはついで出来心で弁護士事務所から金を盗むがそれは”悪徳”弁護士が不法な手段で得た金だったことから、事態は思わぬ展開で突き進んでいく…。舞台となるニューヨークの街、人々をリアルに描いた稀有な作品でありクライマックスのカーチェイス・シーンは伝説になっているアンソニー・マン・ノワールの傑作

注目すべき人々との出会い
ピーター・ブルック追悼

監督|ピーター・ブルック
出演|ドラガン・マクシモヴィク、テレンス・スタンプ
1979|イギリス|107分|カラー

ボブ・ディラン、キース・ジャレットなどのミュージシャンに大きな影響を与えた“神秘思想家”グルジェフの自伝を演劇界の重鎮として名高いピーター・ブルック(2022年7月逝去)が映画化した異色作。生きる心理を求めた青年グルジェフの冒険と神秘に満ちた“覚醒への旅”の最後に登場するグルジェフの“神聖舞踏”は圧巻のフィナーレだ。

赤い唇
アンコール上映

監督|ハリー・クーメル
出演|デルフィーヌ・セイリグ、ダニエル・ウイメ
1968|イギリス|100分|カラー

ベルギーの港町のホテルを舞台に繰り広げられる恐怖とエロテイシズムにに包まれた禁断の世界を描いた怪奇幻想映画。独自の耽美映像で知られるハリー・クーメルの代表作として知られる。主人公エリザベート伯爵夫人を演じたデルフィーヌ・セイリグの銀色に輝くミステリアスな美貌に酔いしれる。

マルチプル・マニアックス
アンコール上映

監督・製作・脚本・撮影・編集|ジョン・ウオーターズ
出演|ディヴァイン、デイヴィット・ロチャリー、メアリー・ヴィヴィアン・ピアース
1970|アメリカ|96分|カラー

1970年の『ピンク・フラミンゴ』で“バッド・テイスト映画の帝王”と一躍その名を刻んだジョン・ウオーターズが’68年に5,000ドルで製作した長編処女作。ウォーターズ自身が“セルロイドの残虐行為”と呼んだこの作品の主役はドラァグ・クイーンの先駆者として名高いデヴァイン。

*作品により、映像・音声が必ずしも良好でない場合がございます。予めご了承ください。

リキッド・スカイ
 
40周年記念4Kデジタル修復版上映によせて

まさか 4K リストア版の”あの空“が観られるなんて!80 年代ニューウェーブなビジュアル、ファッション、ネオンカラー、サウンド!当時は劇場公開に行けず、ビデオをレンタルしては何度もキメた。いやあ、効いた。好きだったわ。後に VHS を買ったくらい。40 年ぶりに吸引してみてわかった。僕の脳内には今も「リキッド・スカイ」が残留し、発光している!令和の若者たちにも、サブスク映画時代には決して生まれえない真の“カルト作”に陶酔してみて欲しい。

小島秀夫|ゲームクリエイター

Sex, Drag and Electronic Music
その後何本もの映画/ドラマで共犯者となる同世代の映画監督との初仕事で、参考曲にリキッドスカイのサントラの”Noon”と”Jimmy’s Theme”があった。僕が喜んだのは言うまでもない。
One of My Best 80s Films/Fim Musics.

上野耕路|作曲家

僕は知らなかった。中性的な主人公、全編に無機質なリズムボックス、サイケデリックなネオンカラーに彩られたオーガズム、究極なまでにコンパクトに表現された Sex & Drug & Violence な SF カルトムービーを僕は知らなかった。2022 年の今、初めて見た「LIQUID SKY」。この映画が公開された 1982 年に、嫉妬してます!

MASASHI|作曲家、ギタリスト from CASCADE

80s ニューヨークのヴィヴィッドなサウンド&ビジョン!
時代を超えた未知との遭遇に思わずレッツ・ダンスだ!

ジョニー志田|ラジオ DJ

こういうイ・キ・カ・タがしたい

滝本誠|映画評論家

レビュー

夢の旅、無意識の解放
柳下毅一郎|映画評論家

理性の束縛を逃れ、夢を解放せよ!

かつてのシュルレアリストたちのスローガンは、奇想天外映画祭で復活する。映画はもともと欲望を解放するものである。映画は夢を解放し、欲望を肯定する。そして映画の中でもっとも抑圧された欲望に近いもの、それは映画の地下意識だ。一般映画に対するアンダーグラウンド映画、昼間の上映に対するミッドナイト・ムービー、それは社会の無意識を反映する映画の無意識といっていいだろう。世界が寝静まった深夜にひそやかに上映される真夜中の映画では、すべてのタブーが破られ、あらゆる欲望が噴出する。世界の秘められた欲望が。

カルト映画と呼ばれ、ミッドナイト・ムービーとして上映された映画を上映してきた奇想天外映画祭だが、今回も待ちかねた珍品が登場する。『リキッド・スカイ』こそミッドナイト・ムービーとなるべくして生まれたミッドナイト・ムービー、映画の世界を超え、その外で大きな文化現象となった作品である。監督スラヴァ・ツッカーマンは旧ソ連で知られたドキュメンタリー作家だったが、西側の文化現象に魅せられてパンク・ポルノともいうべき無二の映画を作りあげる。「デヴィッド・ボウイよりもアンドロギュノス(両性具有的)だ」という主演女/男優アン・カーライルは映画の無機質な美学を見事に体現し、映画に登場するあらゆる人と人ならざるものから欲望され、セックスし、相手を抹殺してしまう。最後には自分で自分をフェラチオしてみせ、ナルシシズムという言葉の次元を引き上げた。

『ワンダーウォール』もまた夢のような欲望の映画であり、ミッドナイト・ムービーとしてヒットした作品である。壁に空いた穴を覗いたらその向こうに裸のジェーン・バーキンがいるという夢のようなワン・アイデアだけで映画が成立してしまう素晴らしさ。壁の向こうの極彩色とジョージ・ハリスンのオリエンタルな音楽の世界は、ほこりまみれで茶色なロンドンが見た夢なのかもしれない。

シュルレアリスト、ジョルジュ・フランジュの映画にはつねに夢の感触がある。今回名作『顔のない眼』とともに上映される『赤い夜』は、テンプル騎士団の財宝を狙う神出鬼没の怪盗団が登場する。だが、屋根の上で警察と女怪盗とがくりひろげる追いかけっこはどこか牧歌的で、夢のように魅力的だ。エロチックでありながら決して完遂されない夢の中のセックスだ。

無意識の解放という意味ではもっとも注目すべき存在である故ピーター・ブルックの『注目すべき人々との出会い』を忘れてはなるまい。神秘思想家グルジェフの悟りへの旅をブルックがたどった映画は、それ自体がブルック本人にとっての魂の浄化となっている。その映画を見ることで、われわれは二人の道行きをたどることができるのだ。今こそ、本年七月に世を去ったブルックのあとをつなぎ、夢と魂の旅をはじめるときである。

上映スケジュール

9月17日(土)〜10月7日(金)
@新宿K's cinema

「奇想天外映画祭2022」トークイベント決定!
★9/24(土)『リキッドスカイ』16:40の回上映後
登壇|柳下毅一郎さん〈映画評論家〉、 宇田川幸洋さん〈映画批評家〉
★10/2(日)『顔のない眼』16:40の回上映後
登壇|中原昌也さん〈ミュージシャン/小説家〉 、 後藤護さん〈暗黒批評〉
場所|新宿K's cinema
「奇想天外映画祭2022」
トークイベント決定!
★9/24(土)『リキッドスカイ』16:40の回上映後
登壇|柳下毅一郎さん〈映画評論家〉
宇田川幸洋さん〈映画批評家〉
★10/2(日)『顔のない眼』16:40の回上映後
登壇|中原昌也さん〈ミュージシャン/小説家〉 
後藤護さん〈暗黒批評〉
場所|新宿K's cinema