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息衝く

2018年2月24日公開

息衝く

配給・宣伝

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2017年/DCP/16:9/130分 ©teamJUDAS2017

監督:木村文洋/脚本・プロデューサー:桑原広考 中植きさら 木村文洋/脚本:杉田俊介 兼沢晋/撮影:高橋和博/撮影・照明:俵謙太/俗音:近藤崇生/助監督:遠藤晶/編集:上田茂/音楽:北村早樹子/録音・ミックス:葛西敏彦/宣伝美術:大橋祐介/製作・配給:team JUDAS 2017

理想なき社会―ある宗教団体で育った子供は、憂国の志士と母親に。
彼らの見上げた空の先には何があったのか―

ある政権与党の政治団体でもあり、大新興宗教団体でもある「種子の会」。この映画は、そこで育った二人の男と一人の女を巡る、3.11以後のこの国の物語である。宗教の掲げる理想、原発の再稼働に目を瞑る政党。理想と現実の間に揺れ、自らの信念を問い続けながらも団体の中で生きる二人の男、則夫と大和。一方、「種子の会」を離れ、母親となり、独りで子を育てる一人の女、慈。彼らには絶対的に信頼を寄せる父親的存在がいた。幼少期からの師でもあり、精神的支柱でもあるカリスマ、森山周。「ひとは独りで生きていける程は強くない。世界ぜんたいの幸福を願うときこそ、個であれ―」そう言ったかつてのカリスマは、日本という国を捨てて失踪した。彼が思い描いた未来は果たしてどこにあったのか―この物語は、未だ生きることに揺れ、自立を確かな実感として感じることのできない三人が、森山に再び会いにゆくことで、自身の背けていた何かを取り戻そうとする。
理想なき社会。そこで各個人がいかに希望をもち、生き続けていくのか。本作は、この国の抱える根本的な問題を、ある特殊な生育環境で育った三人の、それでも誰しもが求める生の実感を追い求める旅を通して知ることになるだろう。

「この国」で個として、自立して、生きる続けること―
社会と個の関わりを問い続けてきた木村文洋が描く、3.11以後の日本のすがた

核燃料再処理工場がある青森県六ヶ所村を舞台に、そこに生きる家族の決断を描いた『へばの』(’08)。「地下鉄サリン事件」オウム真理教の幹部・平田信と、逃亡を助ける女性の、実在の話をベースに、そのありえたかもしれない束の間の愛のすがたを描いた『愛のゆくえ(仮)』(’12)。常に社会と個のあり方と関わりに、鋭く問題を投げかけてきた木村文洋監督による最新長編は、原発、宗教、家族を軸に据え、この社会で、如何にして個として生き続けることができるのかを問うた渾身の長編である。脚本家チームに批評家・杉田俊介らを迎え、3年間に渡り脚本を執筆。撮影、制作は、『ひかりのおと』『愛のゆくえ(仮)』『新しき民』など挑戦的な作品を連打してきたスタッフ陣が務めた。音楽は北村早樹子が担当、演奏に坂本弘道・岡田拓郎(森は生きている)。また役者には、演劇・映像界で活躍する 柳沢茂樹、長尾奈奈、古屋隆太(青年団・サンプル)、坂本容志枝(zora)、川瀬陽太、小宮孝泰、寺十吾(tsumazuki no ishi)らが参加。通常の商業映画とは全く異質なあり方で作られた本作は、原発や宗教という巨大なテーマにも果敢に挑み、今の日本映画の中にあって、まったく異質とも言える野心作が完成した。